わたし個人の意見としましては。
 相手から迫られるというのは、つまりは和姦なわけで。
 こちらとしましても、この状況は静観出来る状態ではないと言いますか。
 むしろ歓迎、と言いますか。
 据え膳という言葉は何のためにあるんだ? とも思うわけで。
 あぁもう舞って可愛いよね。
 こっちが押し倒しちゃうぞ、がお〜、みたいな。
 しかしながらここは水瀬家のリビングなわけで。
 わたしも居候の身、こんなところでいたすわけにもいかないわけで。
 とか思っていても既に右手は舞の乳を揉みしだいているわけで。
 いやね、これは自分の意志とは関係なく舞に無理矢理されているわけで。
 かといって指までは拘束されていないのにこの動きようはどうなの? とも思うわけで。
 首筋をくすぐる甘い吐息と共に漏れる舞の喘ぎ声に凄まじく劣情をそそられるわけで。
「ぅ……ん……ゆういち……」
 理性がぶっ飛びそうです。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
月に叢雲、花に風
     〜お誕生日は無礼講でGO〜

番外ノ七
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ぎし、とソファのスプリングが軋む。
 と同時に舞の体が覆い被さるように密着してきた。
「…………す〜〜」
 寝てるし。
 いや、助かったけどさ……
 なんというか、この火照った体をどうしてくれる、て感じ。
 とりあえず体を起こし、俺はソファからどいて舞をそこに寝かせる。
「はぁ……酒癖悪いぞ、舞……」
 ぺし、とおでこにチョップを入れておく。
 ……しかし。
「すんごい重量感だったな……」
 手をわきわきしながら思う。
 もう、感触が手に張り付いて取れない。
 
 …………
 
 ……まだ、希望は、ある。
 はず。
「祐一さん祐一さん」
 少しへこみ気味のところに栞が話し掛けてくる。
「ん、なんだ?」
「これ、飲んでみてください」
 そう言って差し出してきたのは、甘酒のような白く濁った日本酒。
「こんなのあったか?」
「はい、おいしいですよ」
「銘柄は?」
「え〜と……大吟醸『鬼殺し・改』だそうです」
 すごいネーミングセンスだ。
 鬼殺しってのは結構辛口の日本酒に付けられる名前なんだけど……
 なんか、あまりそうは見えない。
 どちらかというと甘口、という感じだ。
 ……まんま甘酒っぽいけど。
「ささ、ぐい〜っと」
「ん」
 勧められるままに一口含む。
 
 
 
 
 
 ……………………
 
 
 
 
 
「おぇ」
「うわっ、なに戻してるんですか、祐一さんっ」
「うっさいわっ、なんじゃこりゃっ」
 口の中にはなんとも言えない香りと味わいが広がる。
 
 まずっ
 
 まずっ
 
 まずっ
 
 まずっ
 
 まずっ
 
「甘くておいしいじゃないですか〜」
「こんなの酒って言わないぞっ、しかも、この、不自然なまでの冷たさと甘い香り……」
「はい、大吟醸『鬼殺し・改(バニラ風味)』です」
 混ぜやがった……
「栞、おまえ絶対味覚破壊されてる」
 鬼殺し本来の焼かれるような口当たりとバニラアイスの甘さが、凄まじいハーモニーを奏でている。
「口直し」
 ウィスキーをストレートで呷る。
 強烈に口の中に広がり、鬼殺しバニラ風味の後味の悪さを消し去った。
「……今度はこっちのほうがきつい……」
 胃の中まで一気に熱くなってきた。
「……おいしいのに」
 栞はぶつぶつと言いながらコップを傾けている。
 ……大分飲んだな。
「はぁ……栞、程々にしとけよ」
「分かってますって」
 俺の作ったムニエルをつつきながら鬼殺しバニラ風味を飲む栞。
 既にへべれけっぽいな。
 頭が右に左にふらふらと彷徨い始めている。
 ……もうすぐ潰れるな……
「まぁ、明日から休みだし、倒れるまで飲んでも問題ないか」
 空になったグラスに氷を入れながら呟く。
 ウィスキーを水で割り、からからとかき混ぜる。
「さっきのはちょっと勿体なかったな」
 残りは3分の1も無い。
 近いうちに買ってくるか。
 そして香里のストリップを肴にグラスを傾ける。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 酒宴が始まって4時間が経とうとしていた。
 時計を見れば日付が変わりそうな時間だ。
 ……時間が経つのは早い。
 というか、時間の感覚が狂っているとしか思えない。
 ちょっと飲み過ぎたかも。
 名雪、真琴、舞、佐祐理さん、栞の5名は既に潰れて寝ている。
 香里は半裸で秋子さんになにか愚痴ってるし、秋子さんはそれを聞き流しながらワインを傾ける。
 天野は天野で俺に背中から抱かれるようにソファに座り、もごもごと料理をついばんでいた。
 天野が自分で食べていると言うより、俺が食べさせているのも不思議なところだ、
「……なぁ、天野」
「なんですか?」
 適当に料理をつまんで天野の口に運びながら聞く。
「自分で食えよ」
「食べてる」
 首をひねってこちらを向き、もぐもぐと咀嚼していることをアピールする。
「そういうことじゃなくてだな……」
 つんつんと膝をつつく天野。
「……ん」
 そして卵焼きを指さす。
 酔った天野はなんというか、甘えてくる。
 いつもの醒めたような雰囲気は微塵も感じられない。
 幼児退行気味だ。
「あ〜ん」
「はいはい……」
 左腕は天野にがっちりとホールドされているので、全ての右手だけで処理するのも慣れてきた。
 ホールドされている左手は天野が抱きついていて、始終ふたつの膨らみに押しつけられっぱなし。
 でも天野はそれを気にする素振りさえ見せない。
「……飲むの」
 言葉も片言で分かりづらいし……
 『飲むの』は『飲むもの』、つまりはジュースとかアルコール類というわけだ。
 天野が俺に座っているから移動するわけにもいかず、手の届く範囲で何とかするしかない。
 そして、手の届く範囲にある飲み物は、俺のウィスキーしかないわけで……
 泣かれても困るので仕方なくそれを飲ませた。
 ……もう少ないのに……
 グラスの半分ほどのウィスキーをこくこくと喉を鳴らして一息に飲む。
「……けぷ」
 満足したのか、天野はゆっくり俺にもたれかかってくる。
「……ねむい」
「そうか、じゃ、寝ろ」
 ぽんぽんと頭を撫でながら、あやすように体を揺らす。
「うた……うたって……」
 うた、ねぇ……
「なら、定番所で子守歌な」
「ん……」
 天野を抱きながら、ゆりかごのように体を揺らし、耳元で囁く。
 ゆっくりと、ゆっくりと。
 
 
 
 
 
 ねむれねむれ 母の胸に
 ねむれねむれ 母の手に
 こころよき 歌声に
 むすばずや 楽しゆめ
 
 ねむれねむれ 母の胸に
 ねむれねむれ 母の手に
 あたたかき その袖に
 つつまれて ねむれよや
 
 ねむれねむれ かわいわく子
 一夜寝ねて さめてみよ
 くれないの ばらの花
 開くぞや まくらべに
 
 ねむれねむれ 母の胸に
 一夜寝ねて 起きてみよ
 かおりよき ゆきの花
 におうぞや ゆりかごに
 
 
 
 
 
 

 
あとがき
 
改めてこのSS読み返してみると……
矛盾する記述がかなり目立ちますねぇ
後先考えずに書くからこんな事になるわけです
面倒だから修正もしてないし
そのうちどうにかしますか……
 
 

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