ホームルームも終わり、あとは帰るだけとなった。
「その前に栞の所に行かないとな……」
 俺は鞄で爆睡している名雪を叩き起こして教室から出てく。
 
「……いたい」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
月に叢雲、花に風
     〜お誕生日は無礼講でGO〜

番外ノ三
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「……なんで栞がここに?」
 教室を出ると、廊下に座り込んでいる栞がいた。
「なんでと言われても……」
 栞はゆっくりとした動作で立ち上がり、スカートに付いた埃をぱんぱんと払う。
「待ってたんです、祐一さんを」
「……なんでまた」
「天野さんに聞いたんです。祐一さんのところでパーティーするって」
「なんだ、天野に聞いたのか。いまから言おうとしてたんだが」
 手間は省けていいけど。
「……栞?」
「あ、お姉ちゃん」
「どうしたのよ、こんな所まで来て」
「あれだよ、パーティーのこと」
「パーティーって……倉田先輩の?」
「そう。それでどうしたんだ、栞?」
「プレゼントのことで、どうしようかなと思って」
 ……そういえば、必要だよな……
「……そうだな、これから買いに行くか」
「買いに、ね……何を買うつもりなのかしら?」
「ふふん、びっくりするようなものだ」
「……まぁ、そのほうが相沢君らしいけど」
 どういう意味だ、香里。
「で、栞はなににしようか迷っているわけね」
 香里は唇に指を当ててなにやら考え込む。
 ……それよりも。
「香里、ドアの前は邪魔だろ」
「え? あ、そうね……とりあえず商店街に行きながら考えましょう」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「う〜ん、倉田先輩ってお嬢様なのよね……」
 俺たちは商店街への道をてくてくと歩きながら話している。
「まぁ、あまりそうは見えないけどな」
「……祐一さん、それは失礼ですよ、先輩に」
「先輩と言ってもな……同じ学年だし」
「……そうですけど」
「まぁ、値段より気持ちが大事、ってよく言うしな」
「それもそうね」
「手作りだといいんですけど、急でしたから用意出来ませんでした……」
 それもそうだろう。
「で、なにか良さそうな物、ありそうか?」
「……大体はね」
「えぅ……商店街に着いてから決めます……」
 結局、それぞれ選んだプレゼントは渡す時までは秘密と言うことで、俺たちは商店街で別れた。
 もちろん、俺が買うのは……あれだな。
 ふっふっふ、佐祐理さんの驚く顔が楽しみだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ただいま、秋子さん」
 俺は台所にいた秋子さんに声をかけて自分の部屋へ行く。
「あ、祐一さんっ」
「……なんでしょう?」
 階段へ向きかけていた体を秋子さんのほうへ向ける。
「あの、今朝のことなんですけど……」
「今朝……?」
 というと、もしかしてあの電話のことか。
「今日、友達の誕生日のお祝いをここでやってもいいですか? ということです」
「そうだったんですか。それなら、構いませんよ」 
 そう言って、いつものように微笑む。
 今朝、電話口であれだけ慌てていた面影はない。
 ……そのうちまた秋子さんに何かやろう。
「……どうかしたんですか?」
「あ、いえ、なんでもないですよ」
 俺は部屋に向かおうとしたが、もう一度台所の秋子さんに声をかける。
「秋子さん」
「はい?」
「料理とか頼んでもいいですか? 俺も手伝いますので」
「えぇ、いいですよ。沢山来るんでしょう? 腕の振るいがいがありますね」
 秋子さんはおもむろにポンと手を叩き、問題発言をする。
「そうそう、真琴とあゆちゃんにも手伝ってもらおうかしら?」
「それは結構です」
 即、否定しておく。
 あの二人が料理するところは想像したくない……
「……そうですか、残念」
 本当に残念そうだ。
「あ、秋子さん。あゆに今から来れるか電話しておいてもらえません?」
「はい」
 とりあえず……こんなもんかな?
「それじゃ、俺も準備してきます。誰か来たら手伝わせてもいいですから」
「わかりました」
 そして俺は準備を進めるべく、二階へと上がっていった……
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「真琴〜」
「……あに〜」
 ……またなにか食ってるな。
 俺は真琴の部屋にノックも無しで入っていく。
「……真琴」
「ん〜〜?」
 真琴は床に思いっきり大の字に寝そべって、仰向けで肉まんをくわえながら漫画を読んでいる。
「はぁ……もう少し女らしくしろ……」
「いいじゃないよぅ……」
「よくない」
「……祐一は女らしい方が好き?」
「まぁ、一概には言えないけど、どちらかと言えばそうだな」
「……ならそうする」
 部屋の隅に置いてあったクッションを移動させ、真琴はその上に深々と身を沈める。
 そして本を片手に肉まんにかぶりつく。
「真琴」
「ん?」
「今日はパーティーだ」
「肉まんは出る?」
「今食ってるだろ……」
「あぅ……」
「秋子さんのおいし〜い料理と、その肉まんと、どっちを選ぶ?」
「…………あぅ」
 真琴は手に持っている肉まんと俺の顔を交互に見て、あぅあぅと悶える。
「……肉まんはいつでも食えるだろ。それは今度に取っとけ」
「……うん、そうする……」
 囓りかけの肉まんを袋に戻し、大事そうに抱えて立ち上がる。
「パーティーって、何時から?」
「ん〜……ひとが集まったらだな」
 
 ぴんぽ〜〜ん
 
「あ、来たか?」
「もう始まる?」
「……準備があるだろ。真琴も手伝うの」
「あぅ……」
「ほれ、下に行くぞ」
「……うん」
 
 
 
 ……このとき、嫌な予感がしたのは多分気のせいだろう。
 そうあって欲しいものだ……
 
 
 
 
 


あとがき

とくにイベントは無し
パーティは次あたりから本格的に
……多分

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