…………
 
 
 
 
 
 …………
 
 
 
  
 
「俺、方向音痴なのか……?」
 また学校で迷ったり。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
GEDOU 
    〜 奥さん、外道ですよ 〜
 

ツナギノジュウイチ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 昇降口を目指していたはずが、いつの間にか知らないところに着いていた。
 仕方なく元来た道を戻って誰かに案内してもらおうと思ったら……
「……どこよ、ここ」
 見たこともないところに来てしまった。
 いや、来た道そのまま辿ったはずだぞ?
 
 
 
 
 
 …………
 
 
 
 
 
 まぁ、悩んでても仕方ないよな……
「……このでかい扉は、なんだろな」
 目の前にある、なんとなく出口っぽい扉。
「開ければ分かるか」
 軽く押すと鉄の擦れる音がし、思ったより簡単に開いた。
「……出口は出口だけど、逆っぽい……」
 これが校舎裏ってやつなんだろうな……
 俺は一歩踏みだし――かけて一歩下がって扉を閉める。
 
 がし
 
「待ってください」
 閉めようとした扉に異常な程に白い指がかけられる。
「…………」
「なぜ無言で目を逸らすんですか」
「…………」
 
 がし
 
「なぜ無言で帰ろうとするんですか」
「放せよ」
 どうしてここに来たんだ、俺は……
「用が終わるまで放しません」
 ……用?
 それよりもお前自身をどうにかしろ。
 唇、真紫だぞ。
「なんだよ、用って」
「……ひとを、待ってるんです」
「俺は関係ないな、放せ」
「放しません」
「放せよ」
「まだ用は終わってません」
「なら早くしろ」
「……そう言えば、自己紹介まだでしたね」
 いや、なんで話がそこへ行く。
「私、美坂栞っていいます」
「俺は相沢祐一だ、用は終わりだな? 放せ」
「放しません」
「……まだ何かあるとでも言うのか?」
「どこに住んでるんですか? あと電話番――」
 
 どすっ
 
「…………えぅ
 ……はじめからこうしてればよかった。
 俺は扉を閉め、電波女の体を担ぐ。
 ……流石にここに置いておくと凍死するしな。
 マジで。
「さて……保健室ってどこだ?」
 というか、ここはどこだ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 彷徨っているうちに随分と時間が過ぎたようだ。
 なんとか自力で保健室に運んで寝かせて、更に迷って。
 昇降口にたどり着いたときは、すでに人影がまばらになっていた。
「あ……相沢君っ」
 ちょうど香里も帰るところらしい。
「今から帰るのか?」
「今から帰るのか、じゃないわよ……」
「……どうしたんだ?」
「名雪が起きないの」
 ……まだ昏倒中か?
「そのうち起きるだろ、ほっとけ」
「明日まで寝てそうな気もするけど……」
 それは俺もちょっと思った。
「大丈夫、誰が困るわけでもないだろ」
「……名雪自身が困りそうだけど」
 それは俺の知ったこっちゃない。
「いつも遅刻ぎりぎりなんだろ? なら、たまにはだれもいない教室も見させてみるのもいいだろ」
「……それもそうね」
 これが女の友情というやつか。
「それじゃ、帰りましょうか」
「あぁ」
 俺は香里と共に昇降口を出た。
 
 ……寒っ
 
「……やっぱり寒いな」
「そうかしら」
「そうだよ」
 ここの住人の皮膚感覚が異常なんだろ。
「……人間ってのは、どのくらいこの寒さの中で生きていけるんだろうな」
「どうしたのよ、いきなりそんなこと言って」
「……気になっただけだ」
 あの電波女はいつから居たのか、と言うことが。
「……そう。じゃ、またね」
「ん、またな」
 笑顔と共に手を振って別れの挨拶をする。
「…………」
 俺は石化した香里に背を向けて歩き出す。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ただいま、秋子さん」
 ちょうど玄関を通った秋子さんに声をかける。
「あ、祐一さん。おかえりなさい」
 秋子さんの手には鞄が握られていた。
 これから買い物か?
「今から出掛けるんですか?」
「ええ……今冷蔵庫を覗いてみたら、おかずになりそうなものが少なかったので」
 無かった……じゃないんだな。
「俺が行ってきますよ」
「いえ、帰ってきたばかりで悪いですし……」
「そんなことないですよ。ひとっ走りいってきます」
「……そうですか? それじゃ、お願いしますね」
 俺は秋子さんから財布を受け取り、鞄を玄関に置く。
「何を買ってきましょうか?」
「ネギ、にんにく、アスパラ、山芋、ウナギ、貝類の乾物、スッポンとか」
「分かりました、適当に見繕ってきますね」
「…………」
 へこんでいる秋子さんをしり目に俺は玄関を出る。
 そんなもん食わされたら夜眠れねぇっつーの。
 と、門を出たところで俺は足を止める。
 
 ……気のせいか?
 
 角の先で何か動いたような気がしたんだが。
「…………」
 じっとしていても寒いだけだということが分かった。
 行こ……
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 さて、なにを買おうかね。
 俺の目の前には野菜やら果物がずらっと列んでいる。
 一応料理は出来るが食材のことはさっぱりだ。
 ……適当に入れるか。
 秋子さんが料理すればなんでも旨くなるだろ。
 俺は適当にカゴに惣菜を入れてレジに持って行く。
 ……なんでスーパ−とかコンビニのレジっていちいち値段言うんだろ……
 めんどくないのかねぇ……
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「やっと見つけ――」
 ぐぅ〜〜
「あぅ……」
 俺が精算した食材を袋に詰めていると、ガラス越しになにかヘナっているやつがいた。
 
 
 
 
 
 


あとがき
 
真琴登場
次のターゲットは真琴で
なにのターゲット?
とは思わないこと
 
 

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