「ここか……」 
 名雪に書かせた地図を信じれば、ここが今日から俺が居候する家だ。 
「……普通だな」 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
GEDOU
    〜 奥さん、外道ですよ 〜
 

ツナギノ二 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 あのアホの家だ。普通じゃないのかと思ったんだが…… 
 
 
 
 
 
 ………… 
 
 
 
 
 
 ……あぁ、秋子さんが普通なのか。 
 納得。 
「じゃ、行きますか」 
 インターホンを押す。 
 
 
 
 
 
 リィィィィィィィンゴォォォォォォォンンンンンンン……… 
 
 
 
 
 
 ………… 
 
 
 
 
 
「……やっぱ、普通じゃないかも……」 
 でかい屋敷とかにありそうなベルだ。 
 凄まじいまでの重低音。 
 腹に響く。 
 
 ぱたぱたぱた 
 
 かちゃ 
 
「はい、どなたでしょう?」 
 現れたのは名雪によく似た二十代くらいの女性。 
 
 
 
 
 
 ………… 
 
 
 
 
 
 名雪に姉なんかいたか……? 
「あの……どちら様でしょう?」 
「あ、あぁ……祐一です。今日からお世話になる」 
「あら、ごめんなさい。寒かったでしょう、中へどうぞ」 
「はい、おじゃまします……」 
「違いますよ」 
 ……何が…… 
「これからは、ただいまですよ」 
 …………そうか。 
 そうだったな。 
 今日からここが俺の住む家だ。 
 ただいま、だな。 
 七年も出かけていたけど、帰ってきたんだ。 
 
「……ただいま、マイハニー」 
 古っ 
「お帰りなさい、あなた。ご飯にする? それともお風呂?」 
 ……ずいぶんとノリのいいお姉さんだ。 
「そうだな……じゃ、飯で」 
「はい、わかりました。今準備しますね」 
 そう言って何かを期待したような目を向ける。 
 
 ……あれをやるのか…… 
 
 俺も男だ。 
 期待されれば、やらねばなるまいて。 
「いや……食べるのはお前だ〜」 
 言いながらかるく押し倒す。 
「あん、あなた。何もこんなところで……」 
 ほんとにノリがいいな。 
「……ところで、秋子さんですよね?」 
「はい、そうですよ」 
「……名雪の母親の?」 
「ええ」 
 ……そうか。 
 じゃ、続き。 
「あ……ちょ……祐一さん……何を」 
「何って……続きを」 
「え……い、いまのはちょっとしたお茶目じゃないですかっ」 
 お茶目て……それも古いです。 
「ふむ、一児の母とは思えない程の肌の艶、胸の張り」 
「そっ、そんなこと言わないでくださいっ」 
 むにむに 
「あんっ」 
「感度良好」 
 さて、こっちのほうは…… 
「あっ……そ、そこは……」 
 なんてな。 
「冗談ですよ」 
 ぱっと体をはなす。 
「……え?」 
「さすがに俺も実の叔母に手を出したりしませんよ」 
「……そう、ですよね」 
「残念そうですね」 
「そっ、そんなことはないですよ?」 
「どもってます」 
「…………」 
「まぁ……いまのは冗談ですが、秋子さんはまだまだ現役って感じですね」 
「そうですか?」 
 表情が一気に明るくなる。 
 現金すぎ。 
「……そういえば、名雪はどうしたんですか?」 
 絶望にうちひしがれているのでは? 
 ……それすら喜んでそうだな、あのアホは。 
「あぁ、なんだか地面が恋しいとかで」 
「そうですか。納得」 
 ……納得するか? 
 やっぱり変だな。 
「とりあえずこのまま待つのも何ですし、ちょっと早いですがご飯にしませんか?」 
「そうですね……何か手伝いましょうか?」 
「いえ、大丈夫ですよ。出来上がるまでリビングでくつろいでいてください」 
 了解。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 秋子さんの料理は素晴らしいものだった。 
「うますぎです」 
 ベッドに体を投げ出してそう呟く。 
 しかしほんとうにうまかった。 
 家事を何でもこなす、料理もうまい、しかも美人さん。 
「……完璧超人か……」 
 意味は不明だが。 
 
 腹がこなれてくると急に瞼が重くなってくる。 
 ……今日はもう寝よ…… 
 速攻で寝間着に着替え、布団にくるまる。 
 そのときばたんと、ドアの閉じる音がした。 
 ……名雪か…… 
 ずいぶん早い復活だったな。 
 でも、いいや。 
 今日はもう寝る…… 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 新しい明日 
 希望に満ちた明日 
 今日とは違う明日を夢見て俺は眠りにつく 
 平凡な明日になりませんようにと願いながら 
 
 そしてふと、眠りに落ちる間際に考える 
 あいつがいれば退屈はしないかな、と 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ゆういちぃ……放置プレイも結構いいよぉ……」 
 やっぱアホだ 
 
 
 
 
 
 
 

 
あとがき 
 
しかし楽だ、これ 
みんなちょっと壊れてるけど 
……ちょっと 
 
 

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