ばたん、と遠くで扉が閉まるような音。 
 
 ドタドタ 
 
 そして廊下に響く足音。 
「…………」 
 どこか夢現のままぼんやりと考える。 
 今は冬休み、だったはず。 
 
 ――寝ててもいいんだな、今日は。 
 
 そう、休眠中の思考回路の片隅で決める。 
 そして再び深い眠りへ―― 
 
 ドタドタ 
 
 眠り―― 
 
 ドタドタ 
 
「うるせぇ……」 
 俺はむくりと起きあがり、廊下に出る。 
 
 がちゃ 
 
「あ……おはよう、ゆういち」 
 とりあえず、蹴る。 
「だ、だおっ」 
 鳴いた。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
GEDOU 
    〜 奥さん、外道ですよ 〜
 

ツナギノサン 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「あ……え? あ、ゆういち……いま……蹴――」 
「なぁ、名雪?」 
 優しく話しかける。 
「…………えへ…………あ、なに?」 
「おまえうるさい」 
 微笑み。 
 そして転がす。 
「だ、だおっ」 
 
 ごろごろ 
 
 ごとん 
 
 ごっとん 
 
 ごっとん 
 
 ごっとん 
 
 ……落ちた。 
「……これで静かになるな」 
 寝直そ。 
 
 ――寒っっ 
 
 いや、寒いっつーか。 
 痛っ 
 って感じなんだが。 
 なんだよ、これ…… 
 今まで気づかない俺も俺だが。 
 思いっきり眼ぇ冴えたっつーの…… 
 
 
 
 
 
 ………… 
 
 
 
 
 
 ……着替えるか。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 一階に下りると秋子さんが朝食の準備をしてくれていた。 
「おはようございます、祐一さん」 
「……おはようございます」 
 秋子さんは足元で目を回して転がっている物体に気が付いていないのだろうか? 
 ……気付いていないに一票。 
 よく考えればあのアホの母親だしな…… 
「そういえば……名雪(転がって)来ませんでした?」 
「いえ……今日は部活があるってさっきまで騒いでいたんですけどね……」 
 ホントに気付いてねぇのかよ…… 
 哀れ、名雪。 
「……下を、注意して、よく、見てください」 
 
 
 
 
 
 ………… 
 
 
 
 
 
「……あら、名雪まだいたの?」 
 それだけか? 
「ぐるぐる〜……あ、あれ? いつのまに?」 
「今から間に合うの?」 
「あ……えっと……100メートルを7秒で走れば間に合うよ」 
 そりゃ世界新……いや、このアホならやるかもな…… 
「がんばってね」 
「うん」 
「やれると思ってるし、やる気だし……」 
 ホントに出来るのか…… 
「それで、もうこんな時間だけど大丈夫?」 
「全然大丈夫じゃないよ」 
 世界新でも間に合わないのか。 
「……行ってきま〜す」 
「行ってらっしゃい、気をつけてね」 
「うんっ」 
 そして雪を舞い散らせながら走って行った。 
 ……世界、とれるな…… 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「たっだいまはぁ〜〜」 
 なんだそりゃ…… 
「おかえりなさい」 
「うん。ゆういち、ただいま」 
 ひらひらと手を振って答える。 
「お母さん、手伝うよ」 
 そう言って台所へ消える。 
 俺は……やるまでもないな。 
 あの二人だけで十分だろ。 
 二人のふりふりと揺れる尻を眺めつつ出来上がるのを待った。 
「……未亡人とその娘」 
 ……深い意味は……無い…… 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ホントにうまいな、秋子さんの料理」 
 ごろりとベッドに転がりながら呟く。 
 ……そういえば、荷物片付けないとな。 
 さて、どうするか。 
 
 
 
 
 
 ………… 
 
 
 
 
 
 ………… 
 
 
 
 
 
 仕方ない……あのアホを使うか…… 
 部屋を出て名雪の部屋へ向かう。 
 
 がちゃ 
 
「名雪」 
「ななななななにっ? なにっ? え? な、え?」 
 ベッドの中でばったんばったん暴れている。 
「……なにしてんだ、おまえ……」 
「なにって……えへへ……」 
 ……なんなんだ一体こいつは…… 
「まぁいい。部屋片づけるの手伝え」 
「……手伝うの?」 
 不満そうだな? 
「後でいいことしてやる」 
「……いい、こと……」 
 
 にへらっ 
 
「やる」 
「じゃ、こい」 
「うんっ」 
 奴隷入手。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 ずん、と積まれた段ボール。 
「…………」 
「……多く、ない?」 
「こんなもんだろ」 
「無理だよ〜」 
「やれ」 
 そのためのおまえだ。 
「むり〜」 
「じゃ、ご褒美は無しな」 
「これくらい余裕だよ」 
 二十分で運び終わった。 
 
 
 
 
 
 ………… 
 
 
 
 
 
 餌でつったら片付けも三十分で終わった。 
 
 
 
 
 
 ………… 
 
 
 
 
 
 あいつは人類なのか? 
 ……まぁ、使えれば人間だろうとアンドロイドだろうと関係ないな。 
 
 
 その後秋子さんに夕飯の買い物を頼まれた名雪に連れられて商店街へ行ったのだが…… 
 そこでなぜかうぐぅたい焼き窃盗犯の共犯になってしまっていた。 
 とりあえず昏倒させて店主に突き出したからよかったものの…… 
「小学生が万引き……世も末ってやつだな」 
「泥棒はいけないよね……あ、お母さんそれ取って」 
「はい」 
「……ん、うまい」 
「よかった。お口に合いました?」 
「えぇ、これならいつでも嫁に行けますね」 
「あら、誰のお嫁さんかしら?」 
「もちろん、俺のですよ」 
 微笑み。 
「…………」 
「…………」 
「……ここは笑う所なんですがね」 
「……ゆういちが、お父さん……えへ……パパぁ、とか言ってみたり……」 
 ……こいつは…… 
「……りょ、了承……」 
 あんたもか。 
「……ふたりとも」 
「な、なに?」 
「な、なんでしょう?」 
「とりあえず、飯食え」 
「……うん」 
「……はい」 
 なんなんだ、この家族は…… 
 まぁ、あんまり気にしないのが一番か…… 
「……ごちそうさまです」 
「おそまつさまです。デザートはいかがですか?」 
「……いただきます」 
「私と名雪がありますが」 
「イチゴにします」 
「…………」 
「イチゴで」 
「……はい、わかりました……」 
 思いっきり拗ねてる。 
 年を考えろ。 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ふぅ、また食い過ぎた……」 
 ぼふっ、とベッドに体を預け、考える。 
 明日から新学期が始まる。 
 知らない学校で。 
 知らない教室で。 
 知らない生徒と。 
 
 ……かなり早いけど、寝るか…… 
 
 目覚ましをセットしようとして気付く。 
「時計ねぇよ」 
 ……借りるか。 
 廊下に出たところでちょうど名雪もドアを開けた。 
「名雪」 
「あ……ゆ、ゆういち……あ、あの……」 
 なんだ? 
「ひ、昼間の……手伝ったときの……」 
「……あぁ、あれか。それは後。今は目覚まし時計がほしいんだ」 
「……うん……待ってて」 
 そう言って部屋に戻る。 
 
 
 
 
 
 ………… 
 
 
 
 
 
 ………… 
 
 
 
 
 
「……おまたせ」 
 両手に抱えられた大量の時計。 
 ……趣味か。 
 とりあえず一番上にあった白いのを選んでおく。 
「そっ、それで……ご褒美は……?」 
「…………」 
「……ゆういち……?」 
「……そうだな、イメージプレイって知ってるか?」 
「イイイイイメージプレイっ? そんなハイレヴェルなっ」 
 ……アホか…… 
「な、なに? 兄と妹? 父と娘? どんなの?」 
 ……背徳感満載なのばっかりだな…… 
「……ちょっと耳貸せ」 
「うんっ」 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 目覚ましを七時にセットし、枕元に置く。 
 それにしても、冷える。 
 家の中だというのにこの寒さ。 
 ……寝るか。 
 くるまるように布団を被る。 
 そして眠りに落ちる間際、ひとりの少女の姿が脳裏をかすめる。 
「……よほどのアホじゃない限り、からかわれてるって気付くだろ……」 
 名雪にはこの前漫画で読んだイメージプレイとかいうのを仕込んでみた。 
 ……あのアホはそこまでアホじゃないとは思うがな…… 
 そして、意識は深い闇に溶け込む…… 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「……せんせぇ……わたしもう、我慢できない……とか言ったり言ったり……えへへ……」 
 テーマ・居残りを命じられた生徒と、それを忘れた先生。 
 
 ……アホだったか…… 
 
 
 
 
 
 

 
あとがき 
 
 
いまいち外道っぽくない…… 
話が飛びまくってます 
状況の描写もかなり適当 
読みづらいなぁ 
もう少し練っておけば良かったか…… 
………… 
批評お待ちしております…… 
 

SS index / this SS index / next 2001/12/08