「じゃ、ルールを決めましょうか」
「いや、待てよ、誰もやるって言ってないぞ、こら」
「やりますっ」
「あら、私も参加しますよ?」
「3対1で可決されました。さ、とりあえず積みながら決めましょうか」
「……民主主義の弊害がこんなところで垣間見れました……こうやって少数意見は潰されて逝くのですね……」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
月に叢雲、花に風 
     〜わたしに捧げる鎮魂歌〜 

断章ノ四・後 - junky / "un"dressing ? - 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「なに黄昏てんのよ、ほら、さっさと積みなさい」
「…………うぐぅ……………」
 なぜそんな危険なことをせねばならんのだ。
 今身に付けているのは、下着を除けばTシャツとトレーナー、ズボンだけ……
 一応サポーターは付けているけど、流石にそこまでは見せられない。
 つまり、トレーナーとズボンまでしか脱げないということだ。
 実質、負けが許されるのは2回まで。
 そんな危険な橋は渡れないぞ……
 
 
 
 
 
 …………
 
 
 
 
 
「……逃げ――」
「逃げたら相沢君の秘密ばらすわよ」
 秘密っ!?
 まままままさか……
「な、な、なにを言っているのかな?」
「あ〜ら、なんだかどもってるわよ?」
「えぅっ、祐一さんの秘密ですかっ? 知りたいです〜」
「……栞、驚かないで聞いてちょうだい。相沢く――」
「分かった! やる! やるから、マジで!」
「そう? それじゃ席決めからはじめましょうか」
 香里は、これも予定の内とでも言わんばかりにすました顔をしている。
 ……もしかしてハメられた……?
「……ふふ……」
 怖っ
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「それじゃ、ルールを決めますね」
 うぅ……結局やることに……
 ……こうなったら勝ち続けるしかないよな……
 秋子さんはこちらの味方として、問題は美坂姉妹……
 絶対俺狙いだよな。
「東風戦(東場だけで1ゲーム終了)で、半荘終了時にトップは1人指名して脱がせられます。
 基本的には満貫以上の直撃で一枚、ツモあがりのときは任意の1人を指名して脱がせられます。
 親のときのツモはそれに加えて1枚着ることが出来ます。
 ただ、今以上は服を着られません。点数はつけますが、トビは無しです。
 でも今回はトップを決めるだけの点数ですから、あまり気にしなくてもいいですね」
「ツモのときも満貫以上ですか?」
 栞が秋子さんに質問をする。
「ツモのときは満貫じゃなくても構いません」
「……このゲームの終了はいつなんですか……」
 なんだか怖くなってきたので秋子さんにそう言ってみた。
「誰かがギブアップするまでです。ただしギブアップは他の人の同意がなければ出来ません」
 マジでか……
「おまえらはそれでいいのかよ……」
「あら、構わないわよ?」
「私もです〜」
 どういう神経をしているんだ?
 ……てか、俺を脱がそうとしてるんだな、こいつらは……
「相沢君は私たちを脱がせてみたくないの?」
 いや、すっげぇ脱がせたい。
「……絶対に、負けないっ」
「ふふ……それは私の科白ね」
「えぅ……お姉ちゃん……」
「あらあら」
 そして遂に死闘の幕は切って落とされた。
 …………死闘というか、私刑か……
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 東一局
 東 香里 25000
 南 俺 25000
 西 秋子さん 25000
 北 栞 25000
 ドラ表示牌 
 
 
 
 これを満貫に……
「リーチです」
 早っ
 開始早々ダブルリーチかよ……
「……栞、あんた早すぎるわよ」
「そんなこと言ってるとお姉ちゃんを脱がせますよ?」
 ぎし、と空気が軋んだような気がする……
「えぅっ、うそ、うそですっ」
「……そう?」
「あ、ツモです」
「…………栞?」
「え、えぅ〜〜〜〜〜、不可抗力です〜〜〜〜〜〜」
 なにやってんだ、このふたりは……
 
 
 
 
 東二局
 東 俺 23000
 南 秋子さん 23000
 西 栞 32900
 北 香里 21100
 ドラ表示牌 
 
 香里は羽織っていたジャケットを脱いで、今は体にピッタリとした薄手のセーターを着ている。
 ジャケットに隠されていたふたつの膨らみが強調されて、はっきりと……
 
 
 
 
 
 …………
 
 
 
 
 
 いいね、脱衣麻雀。
「鼻の下、伸びてますよ……」
 秋子さんがそっと囁く。
 ……いかんいかん、集中せねば。
「あっ、秋子さん、その二萬ロンです〜〜〜」
「あ、あら、そうなの?」
 動揺している。
「……秋子さんも、伸びてます」
「そ、そうかしら……?」
 秋子さん、マイナス1枚。
 
 
 
 
 東三局
 東 秋子さん 22000
 南 栞 33900
 西 香里 21100
 北 俺 23000
 ドラ表示牌 
 

 
 そろそろ真面目にやらないと……こっちの身も危険になってくるし。
「……ところで秋子さん」
 ツモ・八索
 打・西
「はい、なんでしょう?」
 俺は秋子さんの耳に顔を寄せ、囁くように言った。
「……ブラ、つけてます?」
「当たり前じゃないですか、ちゃんと――」
 と、軽く胸を触ったところで表情が凍る。
「……あら?」
「どうしたんですか、秋子さん?」
「い、いえっ、なんでもないですよ、香里ちゃん……」
 なんでもなくはない表情でそう言う。
「……そうですか」
 今度は秋子さんが俺の方に顔を寄せてくる。
 香水を付けている様子はないが、ふわりといい香りがした。
「……どうして分かったんですか……」
「ぽっちが」
 視線を落とすと、双丘を包む布にわずかながら突起が見られる。
「……………………」
 秋子さんは顔を真っ赤にして、つ〜〜っと体を引く。
 ……かわいいなぁ……こういう秋子さん……
「なににやけてんのよ、相沢君。早くしてよね」
「はいはい」
 ツモ・三萬
 打・九萬
「ん〜……カンね」
 香里が白を暗槓 。
 追加されたドラ表示牌は南。
 西ははじめに捨てたし……
 八萬を引くが、いらないのでツモ切り。
「……少し寒いわね」
 まぁ、いくら季節が春とはいっても、まだ肌寒くも感じるだろう。
 これから更に脱ぐんだし。
 ツモ・九索
 打・九索
「でしたら暖房いれましょうか?」
「えぇ、お願いします。相沢君が可哀想ですし」
「……どういう意味だ、香里?」
「あら、そんなの決まってるじゃない?」
「えぅ……火花が……」
 ツモ・五索
 打・一筒
「ふん、どう決まってるんだか、ほらリーチだ」
「えぅっ、もうですかっ?」
「……ふ〜ん、そう、なら私もリーチよ」
「えぅ……お姉ちゃんも……」
 やるな……
 けれど――
「その三索……ロン、だな……香里」
 俺は口の端をにやりと吊り上げる。
「……くっ……そんな……」
「リーチ一発チートイドラ2……跳満だ」
「…………」
 香里は眉間に皺を寄せ、悔しそうにう〜う〜唸っている。
 ……それはそれで可愛いぞ、香里。
「さ、脱いでもらおうか?」
「……分かったわよ……」
 そう言って足元に手を伸ばそうとする。
「おい、まさか靴下脱ぐとか言わないよな」
「……秋子さん?」
「了承」
「あ、香里っ、秋子さんに聞くのは卑怯だぞっ」
「なんとでも言いなさい。勝負は隙を見せた方が負けなのよ」
 わけわかんねぇよっ
「……お姉ちゃん、(こす)い……」
「……栞?」
「えぅっ、なんでもないですっ」
 ……まぁ、いい。
 それなら俺も靴下で1枚だしな。
「早く脱げよ、進まないから」
「分かってるわよっ」
 香里は靴下に手をかけ、するすると脱いでいく。
 ……こちらを向いて。
 香里はスカートをはいているので、すらりと伸びる足、そしてその奥までばっちりと……
 もう、パンチラっていうか、パンモロ?
「……? どうしたのよ、相沢君」
 しかも気付いてないし。
「いや、なんでもない。気にしないでくれ」
 位置的に栞も秋子さんも見えていないようだ。
「……そう。それじゃ、続けましょうか……相沢君?」
 微笑んだ瞳の奥は復讐の炎に燃えさかっていた。
 ……怖い。
 
 
 
 
 東四局
 東 栞 33900
 南 香里 9100
 西 俺 35000
 北 秋子さん 22000
 ドラ表示牌 
 


「……足元が寒いわ……」
 冷え性か?
 ツモ・西
 打・九筒
「もう少しすれば暖まってきますから」
「もう少しするともっと寒くなるけどな」
 俺の言葉に香里がぴくりと反応する。
「……どういう意味かしら、相沢君?」
「言葉通り……ってやつだよ」
「…………むっかつく……」
「ま、また……」
 ツモ・三索
 打・中
「祐一さん、ポンです」
 秋子さんが鳴く。
 ……もう三元牌は切れないな。
 ツモ・六萬
 打・四筒
「ん〜……これはいりませんね」
 そう言って栞が捨てたのは、發。
 だめだろ、それは。
 …………あれ、鳴かない?
 秋子さん、大三元じゃないのか?
 ……まぁ、秋子さんは俺からはあがらないだろうし、問題ないよな。
 ツモ・南
 打・三筒
「リーチ、ね……」
 五巡目で香里にリーチが入る。
「えぅ……なんか早いです……」
 確かにちょっと出来上がりが早すぎる。
 香里だけじゃない。
 俺も栞も、おそらく秋子さんも。
「……なんでだろうな」
「そういう場の雰囲気なんでしょう」
 秋子さんがどうにも非科学的な事を言う。
「……そう言うことにしましょう」
 ツモ・三萬
 打・西
「それはそうと、相沢君はまだテンパイじゃないの?」
 挑戦的な口調で香里が俺に啖呵を切る。
「……言うことでもないね」
「あら、そう?」
 むかつく。
「…………香里、その三萬チーだ」
 打・三索
「……残念。相沢君からは出ないか」
 出すかよ。
 ツモ・七萬
 打・南
「祐一さん、その南ポンです。」
 秋子さんが鳴く。
 ……と言うことは秋子さんは字一色か。
「さて、テンパイですね」
 わざわざ言うまでもないのに……
 おかげで香里と栞の顔が強張ってきている。
 ふんっ、いい気味。
 ツモ・二萬
 ……大丈夫だよな、これは。
 打・東
 秋子さんはぴくりと眉を動かすと、柔らかく俺に微笑む。
 大丈夫みたいだな。
 俺からはあがらないでくれるようだ。
「ロンです」
 
 
 
 
 
 ……………………
 
 
 
 
 
「マジですかっ、てか、秋子さんも敵ですかっ」
「むしろ香里ちゃんと栞ちゃんの味方です」
「心強いです〜」
「ホントね」
 俺には三人の悪魔が微笑んだように見えた。
 ……四面楚歌とはこのことか。
 しかも味方と思ったひとが実は敵だったというおまけ付き。
「……くっ……俺、まじピンチ……」
 ホントに。
 秋子さん……俺の正体ばれてもいいんですか……
「さ〜て、相沢君…………脱ぎなさい」
「脱いでくださいっ、祐一さんっ」
「あらあら」
 美坂姉妹は両手をわきわきと動かし、じりじりと膝立ちのまま俺の方に近づいてくる。
「早くしないと私が脱がすわよ」
「いえっ、むしろ私が脱がせたいですっ」
「脱ぐから近づくなっ。あ、こら、栞っ、どこ触ってやがるっ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「靴下だなんてがっくりです〜」
「つまんないわよ、相沢君」
 うるさい。
「香里も靴下だったろうが」
「あら、そうだったかしら?」
「そうですっ、お姉ちゃん、靴下取り消して一枚脱いでください」
「……栞?」
「えぅっ、じょ、冗談です、冗談っ」
 なにやってんだか。
「さて、とりあえず半荘終わりましたね」
 秋子さんがそう言うと、香里と栞の視線が俺に注がれる。
 …………まさか。
「この時点でのトップは私です。ということで……」
 そして秋子さんも俺を、というか、俺の体を見る。
「脱いでください、祐一さん♪」
「『祐一さん♪』じゃないです、秋子さんっ、マジで言ってんですかっ」
「マジです」
 目もマジです。
 ……本格的にやばくなってきました。
「…………分かりましたよっ、脱ぎゃいいんでしょ、脱ぎますよっ」
 俺はトレーナーを脱ぎ、後ろに放って席に座る。
「…………」
「どうしたんだ、香里?」
 なぜか香里は俺の手元を凝視している。
「え? あ、なんでもないわよ……」
「……祐一さんの手、綺麗ですよね……」
 手フェチめ……
「触ってもいいですか?」
「だめ」
「けち」
 けちで結構。
「そんなことより、さっさと始めるぞっ」
「そんなことじゃないです、とっても重要なことです」
 そりゃお前にとってだろ。
 
 
 
 
 東一局
 東 香里 25000
 南 俺 25000
 西 秋子さん 25000
 北 栞 25000
 ドラ表示牌 
 


 これなら満貫は簡単だな。
 ナイス配牌。
 ツモ・東
 お、早速ドラ3。
 打・四萬
「ポン」
 香里が俺の捨て牌を鳴き、中を捨てる。
「香里、その中ポン」
 打・七筒
 これで満貫確定〜
「しかしあれだな、香里……」
「……なによ」
「門前で手を作ろうとか思わないのか?」
「……いいなじゃい、ひとそれぞれよ」
 ツモ・四筒
 打・四筒
「まぁ、そうなんだけど」
 やってる方としては手が読みやすくていいんだけどね。
「……それにしても、寒い」
 トレーナーを脱いだせいで上半身がスースーする。
 まだ部屋の中は暖まらないらしい。
「おかしいですね……そろそろ暖まってもいい頃なんですけど……」
 不思議そうな表情でエアコンのリモコンを手に取る秋子さん。
「…………あ」
「どうしたんですか、秋子さん?」
「……ドライになってました……暖まるわけないですね……」
 ボケボケですね。
 ツモ・二萬
 打・二萬
「ポン」
 香里が染めに入ったようだ。
「ごめんなさい……確かめてから点ければよかったですね……」
「……まぁ、冷房になってなかっただけいいでしょう」
 ツモ・三索
 打・西
 う〜ん、なかなかいいね。
「あ、栞、その九索ポンな」
「えぅ……」
 打・發でテンパイ、と。
 さて、後は待つだけだな……
「ロン……ね、あ・い・ざ・わ・くん」
 香里がぱたぱたと牌を倒して可愛く宣言する。
「…………え、マジで?」
「マジで。混一、対々、發で満貫よ」
 マジか……
「ふふ……さ、相沢君……脱いでちょうだい」
「うぅ……」
 秋子さんに助けを求めようとしたが、目が『早く脱いでください』と言っている。
「……………………ギブ――」
「却下」
「……早いっす……」
 ぬぬぬ……
 これ脱いだら後はないけど……負けなければ大丈夫、だよな……?
「……まぁ、いいや」
 俺はズボンを脱ごうとベルトに手をかける。
「おお〜〜」
 栞がぱちぱちと拍手をする。
 …………ん?
 どこからかカチリと音がしたような気が……
 と、思うと、妙に妖しげな音楽が流れ出す。
 …………この、なぜかピンクを思い起こさせる曲は……
「……タブー?」
 『ちょっとだけよ』のBGMでお馴染みの、あの音楽だ。
 ……なぜここで?
 というか、いつ仕込んだんだ?
「ヒューヒューです〜、脱げ脱げ〜祐一さ〜んっ」
 栞は栞でナチュラルハイだし。
「は、早く脱ぎなさいよ……」
 俺が脱ぐのに香里が照れてどうする。
「…………」
 俺は無言でさっさとズボンを足から抜き取り、席に戻る。
「祐一さんっ、なんですかそれはっ」
 栞がいきなり席から立ち上がる。
「……なんのことだ……?」
 栞は眉を怒らせ、腰に手を当ててまくしたてる。
「どうして普通のトランクスじゃないんですかっ、男子高校生の標準的な下着と言えばトランクスでしょうっ
 別にブリーフだとか、ブーメランを履いてくださいと言ってるわけでも、いえ、それはそれでいいんですがっ
 ど〜〜して、よりによって、ハーフパンツみたいな丈の長いトランクスなんですかっ
 それだと……それだと『横からチラリ』的なハプニングが起きよう無いじゃないですか〜〜」
「……はぁ……なに言ってんのよ、あんたは……」
 『横からチラリ』って……なにをチラリとさせるんだよ。
「若いわねぇ……」
 秋子さんは遠い目をして窓の外を見つめている。
「う〜〜〜〜」
「栞……全部脱がせれば一緒でしょ?」
 脱がせる気かよ。
「分かってない……分かってませんよ、お姉ちゃんはっ」
「な、なにがよ……」
「見えそうで見えない……こう、チラ、チラっていうこの焦らされているような気持ち……
 そして見えたときの……ただ見ただけでは味わえない程の充実感……
 お姉ちゃんには『チラリズム』というのが理解出来ないんですかっ」
 俺には栞が理解出来ないよ……
「……まぁ、分からなくもないけど……」
 そう言いながら胡座をかいた俺の股間をチラチラと横目に見る。
「…………ぇぅ……よく見えません……」
 栞はテーブルの下に頭を突っ込んで正面の俺の下半身を覗いている。
「…………秋子さん……タオルケットの使用許可を……」
 美坂姉妹の視線がエロいので。
「だめです」
「なぜですか……」
「脱ぐ意味がなくなるじゃないですか」
 それもそうか。
 それならば……
「寒いんです。部屋が暖まるまででいいんで」
「…………了承」
「なんでそんなに間があるんですか」
「目の保養に……」
「なりません」
 俺は用意したタオルケットを胡座の上に掛け、覆い隠す。
「えぅ……もう終わりですか……」
「…………さぁ、続けるわよっ」
 なにそんなに張り切ってんだよ、香里……
 
 
 
 
 東二局
 東 俺 13000
 南 秋子さん 25000
 西 栞 25000
 北 香里 37000
 ドラ表示牌 
 
 ようやく親番が回ってきた……
 ここでツモあがりなら1枚着れる。
 ……ここはツモでいきましょうっ
「栞、それロンよ」
「えぅっ、なんで私からっ」
「東のみ1000点。脱がなくてもいいのよ」
「……あ、そう言うわけですか〜」
 ……姑息な……
 俺の親を流しやがった……
「ふふ……そう言う事よ……」
「あらあら」
 美坂姉妹と秋子さんの口がニヤリとしたのは気のせいでありますように……
 てか、マジやばいっての。
 
 
 
 
 東三局
 東 秋子さん 25000
 南 栞 24000
 西 香里 38000
 北 俺 13000
 ドラ表示牌 
 

 
 この半荘でトップ取らないと……
 絶対この三人は俺を指名で脱がせる気だし。
「……負けらんねぇ……」
「身ぐるみ剥いであげるわよ」
「それはこっちの科白だ」
「あらあら、この状況でそんなことが言えるのね?」
 むかつく。
 まず香里をムいてやる……
 ツモ・九萬
 打・二筒
 ツモ運は良し。
 これなら速攻で出来上がりそうだな。
「栞ちゃん、それポン」
 秋子さんが發を鳴く。
 ……こっちもやばいかも……
 ツモ・西
 打・八筒
 これでドラ3……
 俺の運もまだまだ捨てたもんじゃないな。
 ……最後まで保てば、だけど……
 今回くらいはたのむぞ。
 ツモ・二萬
 打・五索
 無駄ヅモ無しでテンパイ……
 俺すげぇ。
 ってことで、捨てた五索を横にして千点棒を卓に出す。
「リーチ」
「えぅ……3巡目でリーチは早すぎです……」
「やるわね……」
 ふん、まだまだこれからだよ……
「……ツモ。立直一発自摸混一ドラ3、倍満、8000・4000」
「え……もう……」
「えぅ……」
 リベンジじゃっ
「さ……香里……?」
「な、なによっ」
 怯える香里もまた良しっ
「脱げ」
「…………」
「お姉ちゃん、負けは負けです。潔く脱いじゃってください」
「なんだったら俺が脱がせてやろうか?」
「あ、それなら私も」
「楽しそうですね……」
 秋子さんは俺たちの後ろでにこにことしながら成り行きを見守っている。
「さぁ……」
「お姉ちゃん……」
 香里は座ったままじりじりと後ずさる。
「い、いや……来ないで……」
「怯えるお姉ちゃん……いいですね〜」
「わ、私……もうこれ脱いだら下着しか着てないんだけど……」
「関係ありませんよ、お姉ちゃん」
「そうだぞ。俺なんてもうTシャツとパンツしか着てないぞ」
「う………………ギブ――」
『却下』
 俺と栞の声がハモる。
「……栞、あんた私の味方じゃないの?」
「味方ですよ。味方ですけど、それとこれとは別です。お姉ちゃんは負けたんですから、脱がないと」
「そう言うことだ……て、ことで」
「と、いうわけで」
『脱がさせて戴きますっ』
「い〜〜や〜〜」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「うっ……うっ……」
 香里は胸を片手で隠しながらえぐえぐと泣いている。
「はっはっは、香里よ、俺の気持ちは少しは分かったかな?」
「なんで私が……こんな予定じゃなかったのに……」
「お姉ちゃん、綺麗……」
 栞はちょっとトリップしている。
「しかし、まぁ……」
 香里は淡い水色のブラをしている。
 カップの全体に軽いレースのあしらってある、結構高そうな下着だ。
 それが香里の白い肌には合っていて、こう、なんというか、腹の底からもやもやしたものが……
 ……あ、やべ、興奮してきた。
「祐一さん、目がオオカミさんです」
「…………そんなことはないぞ」
「……もう……」
「……ん? どうしたんだ、香里?」
「もう、みんな敵ねっ、敵なのね!?」
 いや、なに言ってんだよ。
「わ、私はお姉ちゃんの味方ですよ〜」
「ふん、信じられないわねっ」
「え、えぅ〜〜、そんな〜」
 自業自得って気もするが。
 俺としては敵が集中攻撃してこなくなるだけありがたいけどさ。
「……じゃ、はじめるか?」
「はじめるわっ」
 どすん、と席に着く香里。
 と、同時に大きく揺れる双丘。
 ……もう、擬音が『ぷるんっ』て感じだ。
 いっぺんでいいからあんなのを付けてみたいよ……
 
 
 
 
 東三局
 東 栞 20000
 南 香里 34000
 西 俺 29000
 北 秋子さん 17000
 ドラ表示牌 
 

 
 むむむ……
 リーチに持っていけば満貫だな。
 なんとしてもあがらねば……
 ツモ・五萬
 打・一筒
 まだ天は俺を見捨ててはいないようです。
 ナイスツモ。
「祐一さん、カンです」
 秋子さんが俺の一筒を鳴く。
 ってことは清老頭あたりか。
 ドラ表示牌を追加。
 ……九筒。
 役満にドラは関係ないっしょ……
 ツモ・白
 打・二筒
 またまたナイスツモ。
「栞、それポン」
「えぅ……」
 ……香里が動く度に胸がフルフルして、目に毒です。
 ツモ・白
 ……また?
 もう要らないけど、カンしとくか。
「カンです」
 嶺上は……三筒。
 やっぱ俺すげぇ。
 打・四筒
 ついでにドラ表示牌追加。
 ……九筒。
 意味ねぇ……
 ……て、あれ?
 もしかして俺テンパイか?
「う〜ん……」
「どうしたのよ」
「ん? あ、いやなんでもない」
 まぁ、次でリーチしとくか。
「これは……要りませんけど、カンしておきますか」
 秋子さんが俺と同じように六萬をカンする。
 四暗刻に変更?
 さらにドラ表示牌追加。
 ……五萬すか……
「凄いです……」
「なんか壮観ね、秋子さんの鳴き……」
 なんつーか、この時点でドラ12なんですが、秋子さん……
「あらあら、なんだか凄いドラですね」
 凄すぎですって。
 っと、俺の番か。
 ツモ・九筒
 ……確率的には1枚も切れてない七筒で待ってたほうがいいよな。
 てことで打・九筒。
「リーチ」
「なら私も追っかけリーチっ」
 栞もリーチか……
「めくりっこって感じですね〜」
「……一発消し」
 香里が栞の捨て牌をポンする。
「えぅ……」
 せこいぞ、香里。
「えぅ……これ、1枚も出てません……」
 でもリーチしたからもう手は変えられないんだよな。
「……えい」
 ぺち、と出したのは七筒。
「ロ〜ンっ」
「えぅっ、やっぱり〜〜〜」
「立直三色同順白で満貫〜」
「う〜〜〜」
 俺の運のほうが勝っていたようだな、栞。
「ふふ……今度はあなたね、し・お・り?」
「えぅっ」
 じりじりと壁際に追い込む香里。
「ま、待ってください。これ脱いだら殆ど下着……」
 栞は白のワンピースを着ている。
 その下がどうなっているかは分からないが、とにかく薄着だということは分かる。
「どこかで聞いた科白ね……そのとき栞はなんて答えたかしら?」
「…………」
「『関係ありませんよ』だな」
 俺が代わりに答えてやる。
「……えぅ」
「さ、脱ぎなさい。それとも私にしたように脱がされてみる?」
「えぅっ、脱ぐっ、自分で脱ぎますっ」
 と、栞がワンピースの裾を捲り上げたところで、あの音楽が鳴る。
「…………」
「栞……?」
 栞は裾を掴んだままじっとしている。
 そしていきなり崩れ落ちたかと思うと……
「ちょっとだけよ〜、あははは〜」
 笑いながら脱ぎはじめた。
「……なんなのよ、この子は……」
 姉ですら栞を理解出来ないらしい。
「……後遺症だと思っとけ……」
「……そうするわ……」
 俺は無い色気を振りまいている栞を無視して卓に着く。
「さて……今回のトップは俺だな」
「……相沢君?」
 香里が泣きそうな顔でなにかを訴えかけてきた。
「それじゃ……」
 俺は香里を無視して続ける。
「……今回は秋子さんに脱いで貰いましょうっ」
「……………………え」
 自分には来ないと思っていたらしい。
 俺を裏切ったのが運の尽きです。
「わ、私……ですか?」
「そ、秋子さんです」
 さぁ、どう出る?
 今秋子さんが着ているのは長袖Tシャツにスカート、それと下着だけのようだ。
 加えて言うならノーブラ。
 栞と秋子さんは靴下は履かない派らしい。
「うぅ………………ギブ――」
『却下です』
 俺と香里がハモりながら言う。
「う…………分かりました、脱ぎます……」
 そう言ってスカートへ手を伸ばす。
「……あんまり見ないで下さい」
『え〜〜〜〜』
 いつの間にか戻ってきた栞と三人でハモる。
「スイッチオンですっ」
 栞がそう言うと、例の音楽が再び流れ出す。
「ヒューヒューです〜」
「あ〜、踊り子さんには手を触れないように〜」
「……相沢君はどこでそんな事を覚えるのよ……」
 ……テレビとか……
「……えい」
 ぱさ、という軽い音と共にスカートが床に落ちた。
 秋子さんはTシャツの裾を掴んでぐっと下に伸ばして下着を隠そうとする。
 …………あぁ……すっげぇ可愛い……
 顔を赤らめて俯き、もじもじと恥ずかしそうに身じろぐ。
 それが男心をくすぐるというのに。
 ……いや、魅了されるのは男だけじゃないらしい。
「…………」
「…………」
 美坂姉妹も秋子さんの『ぱっと見裸Tシャツ』状態に見入っている。
 『ぱっと見裸Tシャツ』と言っても、その下に着ているのはショーツ1枚だけなんだけど。
「……いいわ……」
「秋子さん……可愛い……」
 ……馬鹿ばっか。
「はいはいっ」
 俺は手を鳴らして注目させる。
「……なんですか、いいところなのに……」
 だからだよ。
「……そろそろ昼飯時だからな、とりあえず終わりにしないか?」
『え〜〜〜』
 美坂姉妹が声を揃えて言う。
 え〜って……香里も……
「なんだよ、もっと脱ぎたいのか?」
「脱ぎたくはないわよ」
「脱がせたいだけです」
 さいですか……
「俺はもう負けるつもりもないし、秋子さんだってそうだろうし。結局最後に負けるのはお前達だぞ?」
「う〜〜〜」
「……まぁ、これまでの対局見ればそうなるわね……」
 香里は大きくため息を吐くと残念そうに呟く。
「仕方ないわね……栞、下着姿でいじけてないで服を着なさい」
 栞はタンクトップにショーツというあられもない姿で床に『の』の字を書いている。
「だってだって〜、祐一さんを脱がせたい〜」
「……また今度ね」
 不用意なことを言うな、香里。
「じゃ、また今度ですね。絶対ですよ?」
「う……」
 香里は助けを求めるように俺を見るが、無視。
「ほら、秋子さん。いつまでもそうやってないで……はい、右足上げて」
 などと子供に服を着せるように秋子さんに服を着せていた。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 俺たちは雀牌を片付け、脱いだものを着てリビングでくつろぎながら話をしていた。
「心残りはあるけど、まぁ、楽しかったわね」
「心残りはありますけど、まぁ、それまた今度に取っておきますね」
 取っておくな。
「んじゃ、昼飯にするか?」
「はいですっ」
「……もう12時過ぎてるけど、用意してあるの?」
「名雪が居るだろ?」
「……あ、忘れてた」
 親友だろ……
「なにが出るんだろうな……」
「イチゴラーメンとか」
 イヤすぎ。
「……ちょっと見てくる」
 心配になってきた俺は台所へ移動して名雪の様子を確かめに行った。
 普通に作っていてくれ……
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「たいやきイチゴラーメンってなんじゃ〜〜〜」
「イチゴは美味しいんだよ〜」
「たいやきだってそうだよっ」
「…………なにが起きてるのかしら?」
「なんでしょうね……」
 昼飯は凄いことになってました。
 
 
 
 
 
 
 
 

 
あとがき
 
終わらせます
半端な終わり方だ……
しょぼいっすね〜
なんか段々SSの質落ちてきてるような
…………
内容は……どうなんだ、これは
書いてるうちは面白いんですが、麻雀は
読む方としては「なんじゃこりゃ」でしょうねぇ……
書いてる途中3回もOS落ちたし
拒否反応?
…………
おかげで何度書き直したことか……


ぜったいどこか間違ってるところあるだろうし
誤字脱字、変なところありましたらお知らせを
それと、批評お待ちしております……
 
 

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