あるところに、ひとりの少年がおりました。
 少年の名前は相沢祐一。
 まるで天使のように姿整った少年でありました。
 性格は少々いびつに育ったようですが、容姿がそれを打ち消しているようで、なかなかに人気者。
 この少年、両親が海外へと渡る際に、自分は残ると言い、いとこの住む街へと居候することになります。
 7年ぶりに再会したいとこ。
 どこをどう間違って育てられたのか、少々変わった性癖を持っておりました。
 その母親は、時々子供のようにふて腐れたりする、大人としてはどうか、というものです。
 そして少年は様々なひとたちに出会うのですが――それはまた違うお話し。
 時はそれよりしばらくさかのぼり、少年がいとこの家に居候する前のことです。
 少年と、少年の初恋の少女。
 これは、その淡い――もしくは濃ゆ〜い――恋の物語でございます。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
GEDOU 外伝
    〜 奥さん、桃色ですよ 〜

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 彼女は俺の二つ上の先輩だった。
 黒髪を背中まで流し、色は白く、大和撫子を地で行っていた。
 そして……俺の、初恋の人だった。
 どうにかしてこの事実を消してしまいたいが、それは無理な話。
 それが俺の初恋であることは変わらないし、彼女が初恋の人だということも変えられない。
 初めて会ったのはいつだったのか、それはもう記憶にない。
 ただ印象だけが強かった。
 彼女の名前は沢渡真琴。
 いつからかも忘れたが、俺は『まーねぇ』と呼んでいた。
 まーねぇはとにかく無口で、コミュニケーションがほとんどテレパシーに近い。
 喋っても力が弱いからなのかよく知らないが、声が小さく、ほとんど聞こえない。
 表情と雰囲気から考えていることを読みとるまで、かなり時間がかかった。
 ――そして初めてはっきりと聞いた、まーねぇの言葉――

『……壷、買う?』

 幸せになれるよ、と謎の科白。
 このとき俺は悟った。
 あぁ、これが世の中ってもんなんだなぁ、と。
 そんないい話が転がっているわけないよなぁ、と。
 急激に俺の恋心は醒めていったが(それはもう、ずぁっ、と音がする程)まーねぇはまーねぇ。
 どこまでいっても、俺のいいお姉さんであることには変わりはない。
 まーねぇが住んでいたのは、俺の家の近くだった。
 俺はよく遊びに行ったが、まーねぇがうちに来ることはなかった。
 外に出るのは好きそうに見えなかったから、そうなんだろう。
 そんなことが数年続いた。
 
 
 
 
 
「あ、まーねぇ。いま帰りか?」
 高校に入ったときまーねぇは3年。
 俺が学校で一年と少しを過ごせば、まーねぇももう大学生。
 近くの女子大にまーねぇは入学し、美しさと思考回路のゆがみにいっそう磨きがかかった。
「…………」
 まーねぇがぽそぽそと何事か喋る。
 よく聞いていないと聞き逃してしまうほど小さい声。
「サークル? まーねぇサークルやってたっけ。……え? 来てみるかって?」
 すんすんと頷く。
 まーねぇのことだからトンデモサークルなんだろうなぁと思いつつ、俺は興味を覚える。
 頷きかけ、そうだと思い出す。
「……まーねぇんとこ女子大じゃん。いいのか、俺が行っても」
「…………」
「え? しゃんと着替えれば大丈夫? ……どんな大学だよ」
「…………」
「こんな大学ですと言われてもな……」
 まーねぇがいる時点で、そこの大学は俺的混沌世界に認定なんだが。
「でもまぁ、いいって言うんなら行ってみたいけど」
「…………」
「着替えはまーねぇんち? 着替えって……スーツとかか」
「…………」
「来ればわかるって、行かなきゃわからんだろうけどさ……」
 とりあえずこんなところで疑似ひとり芝居してるのも寒い。
 行くぞと声を掛けると、まーねぇはつつつと駆け寄る。
「…………」
「いや、3歩うしろのほうがいいかと言われても意味がわからん」
 歪んではいるが奥ゆかしいひとではある。
 大学でもこんな感じなんだろうか?
「で、まーねぇの入ってるサークルってなに?」
「…………」
「行ってからのお楽しみ……って、お楽しみというか恐ろしげなんだが」
 はっきり言って独り言にしか見えないやりとりをしつつ、俺はまーねぇの家へとついていった。
 
 
 
 
 
 ぽそぽそと『紅茶淹れてくるね』と言ってまーねぇが部屋から消える。
 何度もおじゃましているおかげで、いまでは我が家のような感覚。
 勝手知ったるなんとやら、だ。
 まーねぇの部屋は性格のように捻れた異界っぷりはなく、ごく普通の女の子の部屋だ。
 まぁ、たまに変なものが視界に映ったりはするが。
 棚の中にある、少女漫画に挟まれている獣皮の表紙が違和感たっぷり。
「……なんであんなおかしな性格なのだろう」
 基本的にはいいお姉ちゃんだ。
 ただときどき、電波送受信中な言動をするのがいただけない。
「…………」
「って、うわ。戻ってきたんなら声くらいかけろよ」
 まーねぇがいつの間にか俺の隣にたたずんでいた。
 無表情に虚空を見つめ、つぅ、と視線が移動する。
 なにかあるのかと俺も視線の先を追うが、あるのはいつも通りのまーねぇの部屋。
「……なにか見えるとか言い出すなよ」
「…………」
「ただの電波です……って、そっちもいやじゃ!」
 大人しくしてれば結構可愛いだけに、落差が激しくイヤ。
「…………」
「わっかてる、飲むよ。まーねぇは俺の着る服準備してくれよ」
 すんすんと頷く。
「はぁ……なんか行くのイヤになってきたよ」
「…………」
「……そんな不安そうな顔すんな。行くって」
 かえって怖かったというのは秘密。
「で、どんな服? やっぱ気になるんだけど」
「…………」
「大丈夫……って、それがいまいち信用なら、ん……?」
 なにか違和感を感じた。
 指先がしびれるような……ひどく体が重く感じる。
「……あれ?」
 と思ったら、ずしりと、まるでおもしを乗せられたように、体が床に沈み込んだ。
「…………」
「効くのが早いです……ってまーねぇか!? まーねぇのせいか!?」
 すんすんと頷く。
「一服盛りやがった……つーかそれがかわいい弟にすることか!?」
「…………」
「痛くないから大丈夫……っておい! なにする気だ!」
「えっちを」
「久々にちゃんと声聞いたと思ったらそれかよ!!」
 だれかこのねーちゃん止めてくれ!
「ぐぉーーーー、うごかねぇーーーー」
 意識ははっきりしてるのに体がまるで言うことを聞いてくれない。
「…………」
「いただきますの挨拶はいい! ていうかマジか!」
 すんすんと頷く。
 マジらしい。
「…………」
「ってうわっ、脱ぐな脱ぐな!」
「…………」
「脱がない方が好みかどうかはこの際関係ないし!」
「…………」
「やっぱり無理矢理はもえるとかそんなことはいいからだれか本気でこの女どうにかしてくれーーー!」
 
 
 そんな心からの叫びが響いたある日の一コマ。
 基本的にはいいお姉さんなのだ。
 
 
 
 
 


あとがき

ナニガピンクデスカ?

インパクト弱〜い
今回はちょとアレです
力不足です
息切れハァハァ
というわけで詫び印にGEDOU本編30話没原稿公開です
gedou30.txt(別窓で開きます)
あっはっは
誰か助けて(泣

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