昼飯も食べ終わり、しばらくすると秋子さんが買い物に付き合って欲しいと言われた。
 暇だったし、特に断る理由もなかったので散歩がてら付いていくことにした。
 ……やはりというか、外は寒かった。
 玄関を出ると、秋子さんが嬉しそうに微笑んでいる。
「さ、行きましょうか?」
「……寒いっす」
「歩けば暖かくなりますよ」
「それよりは秋子さんの腕の中で暖まりたい」
「…………」
 耳まで真っ赤だ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
GEDOU
    〜 奥さん、外道ですよ 〜

ツナギノジュウロク
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 商店街も入り口に差し掛かってきた。
 ざくざくと歩道の雪を踏みながら、俺は歩く。
「ごめんなさいね、折角のお休みなのに」
「いえ、構いませんよ、秋子さんのお役に立てるなら。なんでしたら伽も務めさせていただきますよ……」
「そうですか? ではそのうちお願いしちゃいましょう」
 平静を装って言ってはいるが、顔が真っ赤だ。
 やっぱり秋子さんはこういった方面には、かなりねんねのご様子。
「……ご無沙汰でしょう?」
「なっ、なにがですかっ」
「なにって……なんでしょうね?」
 純粋な疑問の視線を秋子さんに向けてみる。
「……知りませんっ」
 ぷいっと顔を背け、頬を膨らませる。
 娘の名雪よりも(うぶ)かもしれないな、秋子さんは。
 だが、それでこそからかい甲斐があるというものだ。
 ……しかし。
 あらためて隣に列んでみると、秋子さんは思ったよりも小さい。
 165cmといったところか。
 女性としては普通だろうが、子供心に大きなひとだと思ってたからな……
 俺は思わず秋子さんの頭をぽんぽんと撫でる。
「な、なんですか?」
「なんとなく」
「…………そ、そうですか」
 でも、こんなひとだとは思わなかったな……
 結構幻滅。
 俺の”未亡人の叔母像”が崩れたっつーの。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 米屋のドアを開け、外に出る。
「本当、祐一さんがいてくれて助かりますね」
 俺の両手には米袋が二つ。
 秋子さんが一つ持っているから、計三つか。
 これは確かに俺が必要だな……
「あっ、祐一君っ」
 
 ずしっ
 
「うぐっ」
 持っていた米袋を、駆け寄ってきたあゆあゆの頭に落とす。
「く、首が……」
 首を押さえてのたうち回るあゆあゆ。
 そして何事もなかったかのように帰ろうとする俺に、秋子さんが話しかけてきた。
「ゆ、祐一さん? あの……この子は?」
「あゆあゆです」
 俺がそう言うと、秋子さんはなにやら考え込むように黙る。
「……もしかして、あゆちゃん?」
「知ってるんですか?」
「えぇ……今は入院しているはずなんですが……」
「……あゆあゆ、おまえ病気持ちだったんだな」
「うぐぅっ、その言い方だとボクが変な病気にかかってるみたいだよ〜」
「かかってるんだろ? さっさと病院に戻れ、な?」
 微笑み。
「…………にへ…………あ、うん、もう戻る。じゃ、またね〜」
 あゆあゆは手を振りながら走り去っていく。
「……元気な子ですね」
「そうですね……」
「……帰りましょうか」
「えぇ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ご苦労様です」
「報酬は秋子さんの抱擁でお願いしますね」
「…………」
 帰宅早々に秋子さんは顔を真っ赤にして俯く。
「冗談ですよ。これ、どこに運んだらいいんですか?」
「……冗談ですか……」
「秋子さん?」
「え? あ、そこに置いていていいですよ……」
「それじゃあ、あとはお願いします」
 米袋を玄関に置き、俺は部屋へと向かう。
 ふと顔を上げると、階段にぽちが座ってた。
「あぅっ、おかえりなさいっ」
 その言葉と同時に飛びつく。
 
 ひょい
 
 どがっ
 
 ……階段の段差を利用したボディプレス失敗、て感じだ。
 そしてそのまま動かなくなった。
「……うるさくなくていいな」
 無視して階段を上る。
 とりあえず晩飯まで本でも読んで時間潰すかな……
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ゆういち〜、ご飯〜」
 ドアの向こうから声が聞こえる。
 時計を見ると6時を少し過ぎたところだ。
 本を閉じ、ベッドから体を起こして部屋を出る。
 階段を下りていくと、床にぽちがうつぶせのままのびていた。
「……そのままか?」
 秋子さんも名雪も無視か。
「ゆういち〜、ぽち〜、早くしないと食べちゃうよ〜」
「今行く」
 俺はぽちを肩に担ぎ、台所に移動する。
 そして今日もおいしく秋子さんの手料理をいただいた。
 ホントにうまいね、秋子さんの料理は。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 10時も回った頃、風呂に湯を張ろうと廊下を歩いていると向こうからぽちが走ってきた。
「ご主人様っ、思い出したよ〜」
 そして飛びつく。
 
 ひょい
 
 どがっ
 
「…………あぅ」
 ……学習しろよ……
 
 
 
 
 
 
 

 
あとがき
 
そろそろオリジナルと違くなってきそう……
いや、元から違いますが
……というか、これっていつまで続くんだろう……
 
 

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