「ゆういち……まだ……?」
「……まぁ、そろそろいいな」
 ホームルームも終わり、1時間目までは少し時間がある。
「それでそれでっ、なにくれるのっ?」
「ちょっとそこ座って目閉じてろ」
「うんっ」
 俺は目を瞑ったのを確認するとアホの右側に移動する。
「…………ん〜」
 頬を染め顎をあげて、いわゆる『キス』の体勢を作るアホ。
 ……こいつは……
「……ふんっ」
 
 どすっ
 
「…………だお
 おとなしく寝とけ。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
GEDOU 
    〜 奥さん、外道ですよ 〜
 

ツナギノジュウ 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「ちょっと名雪? ……もう寝てるのね……」
「もう……って、いつも寝てるのか?」
「まぁ、殆ど寝てるわ」
「……なんでだろうな」
「名雪だからじゃない?」
 それもそうか。
「それはそうと、今日から授業ね」
「俺、まだ教科書とか貰ってないぞ」
 香里は頬を染め、ちらちらとこちらを窺いながら言う。
「……あたしのでよければ……見せてあげても、いいけど……」
「教科書だったら、オレの見せてやるぞ」
 俺たちの話を聞いていたらしい男子生徒が会話に入ってくる。
 香里は凄まじい形相でそいつを睨んでいるが、気付いてないらしい。
「……誰?」
「昨日、挨拶したぞ」
「……そうだったか?」
 男の名前は覚え難いんだよな。
「北川君よ」
「ああ……」
 知らねぇ。
「クラスの人は覚えたって聞いたと思うんだけど」
「俺は12時間で人の顔を忘れる特技があるんだ」
「迷惑な特技だな…」
「まったくだ」
「まぁ、いいけど……それで、教科書見るんだろ?」
 少し呆れたような表情を見せたが、あまり気にしてはいないようだった。
 きっといい奴だ。
 いい奴=使いやすい奴ってことだけど。
「俺はありがたいが、お前はいいのか?」
「いいもなにも、後ろの席だからな」
「……そうなのか?」
「どうして真後ろの席に今まで気づかないんだ……」
「俺は後ろは見ないようにしているんだ」
「変な奴だな…」
「悪かったな」
「大体だな、普通は突然の転校生って言ったら美少女と相場は決まってるんだぞ」
「『黙ってにこにこしてれば美少女なのに』とはよく言われるが」
「……信じられんな」
「俺もそう思う」
「……まぁ、変な奴だから授業中退屈せずに済みそうだしな」
 何か言い返そうかと思ったが、チャイムが鳴ったので今回はやめておく。
「あ、もう先生来たみたいよ」
 香里の声を合図にしたように、立ち歩いていた生徒の大移動が始まる。
「とりあえず、よろしくな」
「ああ」
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「…………」
 退屈な授業。
 今までなら退屈なだけですんでいたが、ここの学校は前居たところよりも授業の進みが遅い。
 同じ所を同じように説明される。
 退屈すぎ。
「……眠い」
 とはいえ、さすがに転校早々寝るわけにもいかないし……
 シャーペンを指の中でくるくると回しながら時間が過ぎるのを待っていた。
 
 2時間目も終わりに近づいた頃。
「……人がいる」
 後ろの席の北川が、シャーペンの先で背中をつつきながら、小声で話しかけてくる。
 内一回が勢い余って刺さった。
 ……あとで一発な。
「人くらいいるだろ、学校なんだから」
「いや、そうじゃなくて」
「……?」
 曖昧に返事をしながら横を向くと、名雪の姿があった。
「…………」
 思いっきり昏倒していた。
 傍目には寝ているように見えるが。
「なんか変なんだ」
 なおもシャーペンで背中をブスブスとつつきながら、北川が話を続ける。
 ……分かっててやってんのか?
「……何が?」
 いい加減むかついてきたので振り向きざまに肘を入れる。
 がっ、と予想以上にきれいに顎にヒットした。
「あ、すまん」
「……すっげぇぐらぐらする」
 そりゃな。
「で、なんなんだ?」
「外に人がいるんだけど……なんか様子が変なんだ」
 安定しない顎を手で固定しつつ、窓の下を指さす。
 その先を見てみると、どこか見たことのある女がぽつんと佇んでいる。
「あの子、さっきからずっとあの場所にいるんだ」
 遠くてはっきりとは分からないが、制服ではないようだった。
「そのうちいなくなるだろ……」
 なぜかイヤな予感がしたので、そう答えておく。
「そうだよなぁ」
 北川は納得したのか、窓から視線を外す。
 そして俺はボーっとしながら残りの授業を受けた。
 
 やがて、4時間目の授業が始まる。
 土曜日なのでこれが最後の授業になるらしい。
 前の学校は3時間で終わりだったけどな……
「おい、相沢……」
 後ろの席の北川が、体を乗り出すように前に出てくる。
「あの子、まだいるぞ…」
「そうだな」
 素っ気なく答える。
「大丈夫かな……」
 心配そうに小声で囁く。
 そこがそもそも間違っていることに気が付け。
「なぁ、北側」
「北川だっ」
「……合ってるじゃないか」
「……あれ? 確かに……」
「それはいいとしてだな、北川」
「なんだ?」
「こんな寒い雪の中2時間以上も微動だにせずじっとしている人間が、普通の精神構造してると思うか?
 普通の人間がすることか? お前ならやるか? 俺は間違ってもそんな人種には関わりたくない」
「……酷ぇ言いようだけど、俺も賛成……」
「だろ? なら気にしないことだ。ヘタに気付かれると、どうなるか分かったもんじゃない」
「……確かに」
 不意に、授業の終了を知らせるチャイムが鳴った。
 その音を待ちかねたように、少女が空を見上げる。
「…………げ」
 今時『げ』てのもないが、その少女の顔に俺は見覚えがあった。
 
 電波女。
 
「……見なかったことにしよう」
「どうしたんだ?」
「なんでもない、気にしないでくれ」
「……そうか」
 数学の先生と入れ替わりに担任が教室に入ってきてHRが始まった。
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
「……さ、寒……い……ですね……ここ…………意識、が、飛んじゃいそ……で……す……」
 既に風前の灯火?
 
 
 
 
 
 
 
 

 
あとがき
 
はい、短いです
内容も微妙です
思いっきり風邪ひきました
これ書いてるときは既に完治してましたが
…………
さぼってました
ごめんなさい

「月に〜」は50%ほど進んでます
いや、麻雀書くのこんなに面倒だとは……
…………
さぼりです
ごめん
 
批評お待ちしております……
 

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